2023年1月6日

今日も家にいる。妹が「休みの日に仕事のことを考えても給料は発生しないので無駄」と言っていて、それは本当にそうだよなと思う。似たような環境で育ち、似た遺伝子をもつ人間であるのにこうも気質が異なるのは不思議だ。妹の動じなさを私は密かに尊敬しており羨んでもいるが、本人に伝えたことはない。

 

給料が発生せず愉快でもないことに時間を使うのは無駄なので、ポッドキャスト又吉直樹の芸人と出囃子』を聴きながら、換気扇周りなど普段しない箇所の掃除をする。又吉直樹さんが毎回異なるお笑い芸人をゲストに招き、その芸人の出囃子にまつわる話を聞く番組。出囃子を出発点として、音楽遍歴や家族、学生時代についてなどに話が波及していく。聞き手としての又吉さんも素晴らしく、相手のことを否定するでなく笑いに変える手腕や、ゲストを輝かせるパスの出し方に毎回感嘆してしまう。

 

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しかし過去の著作などから推察して、又吉さんがただただ穏やかな人間であるかというときっとそうではないと私は思っている。小説『人間』では、又吉さんの分身であると思われる芸人が、あるコラムニストに「作家気取りのお前は芸人失格」といった内容の記事を書かれて狂気の長文メールで反撃をするシーンがある(小説がいま手元になく、細部が誤っていたら申し訳ありません)。明言はされないものの、現実で又吉さんについて書かれたあるウェブ記事と明らかに関連があると思われ、初読で「これが、大人の喧嘩…!」と思ったのを覚えている。そういう激烈さを抱えたうえで穏やかに人と対話できることが私の憧れる大人像の一つで、「想像力が欠落した豚は黙っていろ!」(又吉直樹『東京百景』)と時に心の中で唱えながら微笑みたい。